ソフトウェアの無断インストール販売で大阪地裁が8,000万円の賠償認める判決
2004/6/8 更新
ACCSの会員である株式会社モリサワ(以下、モリサワ)のフォントプログラムが、コンピュータに無断インストールされて販売されていたとして、モリサワが、コンピュータ・周辺機器の販売会社(以下、被告会社)とその代表者(以下、被告代表者)に対して、損害賠償を求めて提起していた訴訟について、大阪地方裁判所(小松一雄裁判長)は平成16年5月13日、モリサワの主張をほぼ全面的に認め、被告らに請求額とほぼ同額の約8,000万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
ソフトウェアを無断でインストールして販売する事案については、これまでにも刑事摘発の対象となるケースはありましたが、民事的な損害賠償を求めて裁判に至るケースは珍しく、今回の判決は、先例的な意味を有する重要な判決の1つとなりました。
特に、インストール販売による著作権侵害の事例では、販売数などについて侵害者が記録をとるなどの特別な事情がない限り、正確な損害賠償額を算定することが困難であるとの指摘が従前よりされていましたが、大阪地裁は、この点について、積極的に被害・損害の認定を行っています。
判決によると、被告会社と被告代表者は、平成10年11月ごろから、同社が販売していたコンピュータに、モリサワのフォントプログラムの海賊版を無断でインストールし、多数の顧客に販売することによってモリサワの著作権を侵害していました。
大阪地裁は、被告会社などによる著作権侵害行為を認定した上で、実際の被害規模と額については、「(対象となるコンピュータの)台数自体が極めて多数に上り、販売先である顧客の数も相当に多数に上るという事情に照らせば、被告会社が何台のパーソナルコンピュータのハードディスクに本件フォントプログラムの海賊版をインストールしたか、またその際に何書体分をインストールしたかを厳密に立証することは事実上不可能である」として、著作権法114条の5(※1)の規定により、裁判所自らが損害額を積極的に認定しました。
また裁判所は、被告会社の代表者も会社と連帯して損害賠償金を支払うことや、被告会社がインストール販売に用いたと認められるモリサワのフォントプログラムの海賊版を消去することなどを命じました。
この判決には、当事者による損害額の立証が困難な事例についても、「侵害のし得」を許さないという裁判所の姿勢が示されており、知的財産権を尊重し、知的財産立国を目指すわが国全体の政策とも合致する判決であるとACCSでは考えています。
今回のようなソフトウェアを違法にインストールして販売する事案をはじめ、組織内で行われるソフトウェアの不正コピー事案は未だ後を絶ちません。不正コピーが反復継続して行われると、ソフトウェアメーカーは対価を獲得することができず、新たなソフトウェアの開発に支障を生じさせてしまうことなりかねません。またソフトウェア業界の発展、デジタル情報やコンテンツの作成を行うことにソフトウェアが必要不可欠になっている現状を鑑みると、よりよいソフトウェアの開発意欲を阻害し、デジタル情報産業全体の発展にブレーキをかけることにもなります。
ACCSでは、今後ともソフトウェアの不正コピーが減少するよう、ソフトウェアの適正な利用や著作権をはじめとする知的財産権の重要性について、広くユーザーの皆様の理解を求めて参りたいと考えております。
※1 著作権法 114条の5
著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
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