よくわかるソフトウェア管理(連載)

第10回 タイにおける違法コピーの現状

タイでは経営者も刑事罰を負います

タイ著作権法は、日本の著作権法と同じく、コンピュータソフトウェア(プログラム)は保護の対象であり、海賊版のインストール・保有ライセンスを超えたインストールは著作権法違反となり、インストールを行った者は禁固刑、罰金刑、あるいはその両方の刑事罰が課せられる可能性があります。
さらに、日本の著作権法と異なり、法人の取締役またはマネージャーも法人と共同責任を負うとされており、上記刑事罰が科される可能性があります。
つまり、経営者にとっては、タイにおいて違法コピーをしてしまうことは日本以上にリスクが高いことになります。


タイでは刑事責任の追及と民事責任の追及が同時に行われます

また、タイの法制度と日本の法制度が大きく異なる点として、警察の捜査が先行する点が挙げられます。裁判所の捜査令状をもとに、経済警察に加え、著作権者(ソフトウェアメーカー)の代理人や技術者も強制捜査に参加します。
そこで違法コピーが発覚した場合、捜査で得られた証拠をもとに、民事手続きとしてソフトウェアメーカーから和解案の通知を受けたり、刑事手続きとして警察への出頭命令が下されたりすることになります。


「和解」で刑事罰はなくなります

しかし、タイ著作権法によると著作権法違反は和解できると規定されており、タイにおけるほとんどの「違法コピー」はソフトウェアメーカーとの間で和解による解決が図られ、刑事訴訟、民事訴訟を回避しているようです。実際、2009年において、コンピュータプログラム侵害に対する刑事訴訟は1件もなかったそうです。


タイの違法コピー率は73%

ところで、BSAの2010年世界違法コピー調査によると、タイの違法コピー率は73%となっています。2006年の同調査では80%でしたので、5年間で7%違法コピー率が減少したことになりますが、依然として高い違法コピー率となっています。
タイ国内で摘発を受けた企業の実例を見てみますと、正規品を一つだけ購入し、複数台のPCにインストールしていた、ソフトウェアの管理・監査を行っていなかったという日本と同様な理由がありました。それに加え、コンピュータを購入した際に、すでに違法コピーソフトがインストールされていた、コンピュータ導入時には正規ライセンスであったが、その後のメンテナンス業者によって違法コピーに入れ替えられた、という今の日本では考えられない実態もあります。


社員教育と正しい業者選びを

ACCSではJETROバンコクの招請を受け、2007年にタイとベトナムにおいて日系企業向けに開催したソフトウェア管理のセミナーに講師して参加しました。その際に、タイの日系企業のトップの方にソフトウェア管理の状況をヒアリングしたところ、現地スタッフであるソフトウェア担当者は会社にとって利益になるからと違法コピーの利用を薦めてきたそうです。そこで、違法コピーは法律違反でありやってはいけないことを説明し、担当者に納得してもらった上で、ソフトウェアの利用についての社内ルールを定め、社員教育をおこない、現在ではきちんと管理ができているとのことでした。
中国の場合でも説明いたしましたが、タイにおいてもビジネスソフトのみならず、日常生活でも海賊版が多く販売されており、ソフトウェア管理担当者を含む社員全員の教育は日本国内以上にしっかり行うべきでしょう。
また、社内では管理体制がしっかりできていても、PC・ソフトウェアの販売業者やメンテナンス業者から違法コピーが発生しないよう、正しい業者を選ぶことも重要でしょう


次回も引き続き、アジア各国でのソフトウェアの違法コピーの状況や対策等の情報をご紹介いたします。

参照リンク

(2011年6月14日公開)


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