よくわかるソフトウェア管理(連載)

第8回 中国における違法コピーの現状

中国でも違法コピーは法的に許されません

中国は日本と同様、著作権に関する国際条約に加わっており、著作権法ならびにコンピュータソフトウェア保護条例が整備されています。
もちろんソフトウェアの違法コピーは上記法律・条例に違反する行為となり、著作権者であるソフトウェアメーカーから侵害行為の差し止めや影響の排除、謝罪、損害賠償を求められるだけでなく、公共の利益を害する場合には、侵害行為の差し止め、違法所得の没収、侵害複製品の没収廃棄、罰金などの行政機関による処罰の対象となります。さらに、営利を目的とした著作権侵害で販売額の多い場合には刑事罰を科せられる可能性があります。実際に、2006年に江蘇省所在の日系企業が違法コピーで50万元の行政処罰に処せられています。


中国の違法コピー率は79%

法律は整備されている一方、残念なことに違法コピー率はまだまだ高いのが実情です。
BSAの調査によると、2009年の中国におけるソフトウェアの違法コピー率は79%となっています。
2000年の同調査によると違法コピー率は94%で、正規ライセンスのソフトウェアを探す方が難しい状況でした。BSAの調査は2003年から調査項目が変わったため単純に比較できませんが、9年間で15%違法コピー率が下がった計算になります。


正規版化運動

中国では、国家版権局と関連部門とともに全国で正規版ソフトウェアを使用する運動が2001年から行われています。正規版化運動は政府のPCから始まり、2011年5月末までには中央政府機関の正規版化を完了させ、2011年10月末までに省市県政府機関の正規版化を完了させる目標となっています。
一方、民間部門もソフトウェアの正規版化が進められており、2009年末までに、全国で497社の企業がソフトウェア正規版化検査に合格したほか、2010年9月には湖南省版権局により「全国ソフトウェア正規版化モデル企業」が選定されるなど、民間部門への啓発活動も活発に行われています。


高額の損害賠償判決も

また、2010年4月には上海の裁判所(上海市浦東新区人民法院)において、中国の保険会社の組織内違法コピーに対し米国のソフトウェアメーカーが損害賠償を請求していた裁判の判決があり、217万2800元の損害賠償の支払を命じる判決が言い渡されています。


正規版化だけでは不十分です

このように、中国国内での違法コピーが発覚した場合のリスクは日本と同様です。高額の損害賠償請求を受けうるという観点でも同じなのです。
前回も指摘しましたが、違法コピー率が高い国では、日常でも海賊版が当たり前に流通しており、それを会社のパソコンにインストールすることが普通と考える現地の従業員を雇用しているわけですから、正規版化だけでは不十分で、むしろ日本国内以上にソフトウェア管理を徹底する必要があるのです。
ACCSでは日系企業のソフトウェア管理の普及のため、上海市版権局、大連市版権保護協会などと共同で、ソフトウェア管理のできている現地日系企業に対する表彰活動を行ってきました。


管理上の留意点

ソフトウェア管理の基本的な考えは、日本国内と変わるところはありません。管理の主体を中国の子会社で行うか、日本の親会社で行うかという点も、国内の本社と支店における管理と同様です。ただし、日本で購入したライセンスを中国の子会社で使用できるか否かはソフトウェアメーカーごとに異なるため、使用許諾契約を確認する必要がある点に留意して下さい。

次回も引き続き、アジア各国でのソフトウェアの違法コピーの状況や対策等の情報をご紹介いたします。

参照リンク

(2011年1月6日公開)


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