職場編
委託開発してもらった社内システムを、開発した会社ではない別の会社に依頼して改修してもらってもよいか?
この場合、開発を委託した際に交わした契約において、著作権の所在がどのように記載されているかによって異なります。
委託開発契約に著作権の譲渡(二次的著作物を作成する権利(翻案権・翻訳権等)(27条)、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(28条)についての特記含む)が記載されており、かつ、著作者人格権の不行使が明記されていれば、社内システムの著作権者は自社になりますから、改修の依頼をどこに行ったとしても問題はありません。
著作権の譲渡の記載がある場合でも、二次的著作物に関する権利について特記がない場合は、その部分は譲渡されていないと推定されるため(61条2項、27条、28条)、社内システムの改修については、開発した会社の許可が必要となります。また、契約で著作権の譲渡について、何らの取り決めがない(著作権に関する記載がない)場合は、社内システムの著作権者は開発した会社ですので、開発した会社の許可なく社内システムの改修を行うことはできません。
ただし、プログラムの複製物の所有者は、自らその著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、著作権者などの許可がなくても、その著作物を複製または翻案することができます(47条の3)ので、自社自身で改変することについては、開発した会社の許可がなくても行えます。
会社でパソコンを購入した際に、営業マンから「サービスでソフトウェアをインストールしておきました」と言われたが、そのソフトウェアを使用してもよいのか?
ソフトウェアを購入するなどして正規にライセンスを取得せずに、サービスなどとして入手したソフトウェアを使用した場合、自分がインストールしなくても違法となる場合があります。著作権法では、ソフトウェアを使用することができる状態になった時点(この設問の場合は、パソコンの購入時)で、そのソフトウェアが違法にコピーされたものであると知っていながら業務で使用すると、著作権侵害をしたものとみなされます(113条2項)。
なお、プログラムの複製物の所有者は、「自ら当該著作物を電子計算機において、利用するために必要と認められる限度内において」プログラムの複製をすることができる(47条の3)とされています。しかし、営業マンがサービスでソフトウェアをインストールする行為は、自らがこのソフトウェアを使用するために行う複製ではありませんので、この規定に当てはまりません。
会社で使用するすべてソフトウェアについては、ライセンスを正規に購入する必要があります。
社内でソフトウェアの不正コピーを防止するためにはどのような点に注意すればよいか?
社内のパソコンで利用している各ソフトウェアについて、ライセンスの保有数と実際のインストールの状況を確認し、インストールされている数が保有するライセンスでインストールを認められている数以下に保つことが必要です。そのためにはソフトウェア管理を実施することが必須です。詳しくは「ソフトウェア管理のすすめ」をご参照ください。
社長がインタビューされたTV番組の映像を、PRのために会社のホームページにアップロードしてもいいか?
TV番組の製作者や放送したテレビ局の許可を得る必要があります。
たとえ社長が番組映像の製作者に請われて当該インタビューに応じたものであったとしても、当該番組映像の著作権は番組製作者が有しています。そのため、著作権者の許可なくホームページにアップロードすることは、公衆送信権(23条)の侵害にあたります。(ただし、同一構内のイントラネットにアップロードするだけであれば、公衆送信権の侵害にはなりません。)
また、実際に放送された当該番組映像を会社のホームページ(またはイントラネットに)にアップロードするために録画したのであれば、その録画行為は複製権の侵害になります。適法に社長のインタビュー映像を会社のホームページやイントラネットにアップロードするのであれば、収録時に番組製作者や放送局に許可を得るための手続きやその可否などを確認することが、現実的な対応でしょう。
新型の印刷機を開発する過程で出力の精度を検証するために、有名なアニメーションのカラーイラストを印刷してもよいか?
新型の印刷機の性能を確認するという目的だけであれば、著作権者の許可なく印刷することができます(30条の4)。ただし、検証のために印刷することが認められるだけで、当該印刷物を広告に利用するなどその他の用途で利用する場合は、著作権者の許可を得る必要があります。
新聞の切り抜きをスキャナーで取り込みPDFファイルにして社内ネットワークで閲覧させることはできるか?
一部の訃報記事などをのぞき、新聞の記事は著作物です。
新聞の切り抜きをスキャナーで取り込み、PDF化することは複製にあたり、著作権者の許諾なく行うと複製権侵害となります。
また、新聞の切り抜きのPDFファイルなど、プログラムの著作物以外については、同一構内の送信は公衆送信から除外されており、同一構内のみの社内ネットワークでファイルを公開することは公衆送信の対象ではありません。しかし、外部からアクセスできる社内ネットワークや、離れた本支社を結んだ社内ネットワークの場合、公衆送信行為となるため、権利者に許可を得る必要があります。