「権利制限の一般規定に関する中間まとめ」に対するパブリックコメントを提出
6月24日、文化庁が5月25日より意見募集を行っていた標記中間まとめに対し、ACCSよりパブリックコメントを提出しました。
ACCSからは、導入について反対の意見を述べるとともに、本中間まとめにおいて議論されている3類型についても、その要件について意見を主張しています。
<パブリックコメント概要>
第3章 3 権利制限の一般規定の導入の必要性を考える場合に検討すべき事項について |
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(1)権利者に与える不利益について |
「一般規定」と称することによって、結果として予定された要件や趣旨を逸脱した利用においても「一般規定の適用あり」と居直る侵害者が発現する。実際に、会員社によれば、米国の動画共有サイトにおける違法アップロード対策として削除要請を行っているが、削除に対して申し立てがなされる異議は相当数に上る。対応を行うのは権利者であることから、権利者にとっては不利益であり、権利者のみがリスクを抱えることになんら変わりはない。 |
(2)権利制限の一般規定導入による経済的効果について |
一般規定の導入を希望する利用者側が、導入することによって大きな経済的効果が生ずる論拠として提示した報告書を検証したが、経済的効果が生じるか確認できない旨結論づけられた。にも関わらず、当該報告書を拠り所とする利用者側のヒアリングによる「萎縮効果が働いている可能性」のみを以て、何らかの効果が生まれる可能性を導き出すのは不当だ。 |
第3章 4 まとめ |
一般規定の導入を希望する利用者側の根拠は否定的な結論となっているが、利用環境・社会状況の変化といった、抽象的な根拠をもとに導入の意義を導き出すことは不当だ。導入の「意義」ではなく「必要性」について十分に議論を重ねた上で、導入の是非を結論づけることが必須である。利用者において利用それ自体を躊躇せざるを得ない場合がある、と中間まとめに記載されているが、権利侵害の可能性があるなら、一義的には許諾を得るための努力をすべき。実際に本まとめに別添された参考資料P71以降に挙げられた具体的事例のうち、許諾を得ることで解決可能な事例も少なくない。 |
第4章1 権利制限の一般規定により権利制限される利用行為の内容について |
(2)いわゆる「形式的権利侵害行為」への対応(A類型) |
本類型は、いわゆる「写り込み」が想定されているが、それに特化した個別的規定により対応すれば十分だ。意図的な「写し込み」は除外すべきで、少なくとも現在の要件に「偶発的なものであること」を加えるべき。 |
(3)いわゆる「形式的権利侵害行為」と評価するか否かはともかく、その態様等に照らし著作権者に特段の不利益を及ぼすものではないと考えられる利用への対応 |
②利用の類型(1)(B類型) |
本類型で想定されている事例に関しては、(a)著作権者の許諾に基づく利用と(b)個別権利制限規定に基づく利用に分けて検討すべき。(a)の利用形態は、黙示的許諾の法理または個別権利制限規定の解釈によって解決可能。(b)の利用形態は、全ての個別権利制限規定に基づく利用を一律に論じるべきではない。 |
③利用の類型(2)(C類型) |
本類型の要件として掲げる「著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用」にどのような行為が当てはまるかが判然としない。法制小委の委員の中には、トランスフォーマティブ的な利用も含まれると解しているようだが、C類型は実質的に米国版のフェアユースのかなりの部分を取り込んでしまう結果となる。誰も希望しない規定を導入する必要はない。また、本まとめにある通り、近時に法改正がなされたインターネット等を活用した著作物利用の円滑化を図るための権利制限規定以外に想定される事例が存在しないのであれば、例示された技術検証のための複製等を制限する個別制限規定に留めることが適当である。 |
第4章 2 権利制限の一般規定を条文化する場合の検討課題について |
(1)要件等の留意事項 |
②権利制限の対象とする支分権及び著作物の種類 |
各類型においてプログラムの著作物が利用される場面は想定できない。B類型は、47条の3で必要と認められる限度の複製は制限されている。C類型は、プログラムの著作物は、本来の利用が「表現の知覚」によるものではない。C類型で権利制限の可能性があるとされるリバースエンジニアリングは、既に個別制限規定を創設することが結論づけられている。これらのことから、本まとめにおける各類型においてプログラムの著作物が対象とならないよう明示していただきたい。 |
- 権利制限の一般規定に関する中間まとめへの意見 全文(207KB)[PDF]
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