ファイル交換サービスに関する東京地裁判決について
2003/1/30 更新
(社)コンピュータソフトウェア著作権協会
専務理事・事務局長 久保田 裕
ファイル交換ソフトの一種である「ファイルローグ(File Rogue)」を一般に頒布し、これを使ったファイル交換のしくみを提供している日本エム・エム・オー社(東京・八王子市)に対して、(社)日本音楽著作権協会(JASRAC)および(社)日本レコード協会(RIAJ)の会員等レコード製作者19社が、著作権等の侵害を理由に、一部のサービス提供の差し止めと損害賠償を求めた裁判で、平成15年1月29日、東京地方裁判所(民事29部、飯村敏明裁判長)は、日本音楽著作権協会とレコード製作者19社の主張を認め、日本エム・エム・オー社の著作権等の侵害を認める中間判決を言い渡しました。
判決では、平成14年4月に決定された仮処分命令と同様に、「ファイルローグ」の利用者がこれを利用して音楽ファイルを送信又は送信し得る状態に置くことは、著作権等の侵害であることを確認するとともに、大量に著作権等の侵害が行われることを予期した上で漫然とソフトやシステムを提供した日本エム・エム・オー社自身も「ファイルローグ」を使った公衆送信権等の侵害行為の主体であると判断されています(さらに、判決では同社の代表者に対しても著作権等の侵害の損害賠償責任があると判断しています)。
ピア・ツー・ピア(Peer to Peer)の技術そのものは「本来」違法であるとは言えません。しかし、著作権等の侵害が行われることを予想した上で行われた日本エム・エム・オー社によるファイル交換ソフトやシステムの提供行為については、著作権等の侵害を誘引・助長・援助している側面があることは否定できないと考えます。したがいまして、今回の判決は、極めて常識的な判断として評価できるものと考えております。
さらに、先の仮処分決定や今回の判決でも示されているとおり、ファイル交換ソフトの利用者がこれを利用して著作物ファイルを送信又は送信し得る状態に置くことは、著作権等の侵害になることは明らかです。したがって、それを前提としてファイル共有等をしている利用者も責任が問われる可能性があります(平成15年1月21日、米国においてはDMCAに基づいて発信者情報の開示請求が認められました。わが国でも平成14年にプロバイダ責任法が施行され、同様の請求が可能となっていますので、今後はこの法律の活用等により利用者の責任が問われることもあり得ると考えられます)。
当協会では、今後も日本音楽著作権協会および日本レコード協会等の本件にかかわる活動を支援するとともに、他のコンテンツ関連団体とも密接な連携を結び、著作権制度の一層の普及啓発に努め、ファイル交換ソフトの利用者に対しても著作権ルールの遵守を求めて参ります。
以上
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