改変データ集の販売事件について
2001/11/7 更新
(社)コンピュータソフトウェア著作権協会
専務理事・事務局長 久保田 裕
本日、当協会会員テクモ株式会社(東京都千代田区)が、同社のゲームソフト「デッド オア アライブ2」の改変を可能とするデータ集を販売した株式会社ウエストサイド(兵庫県尼崎市)に対して、損害賠償を求めて東京地方裁判所に訴訟を提起した旨の報告を受けました。
ゲームクリエーターは、プレイヤーの操作を前提としながら、ゲーム展開の「幅」を巧みに設定することによって、自らの思想・感情を表現しています。このため、その「幅」を逸脱するデータが幅広く出回ると、本来そのゲームソフトに表わされているゲームクリエーターの思想・感情が「歪められて」プレイヤーに伝わることになり、クリエーターの評価にも影響を与える可能性があります。
特に、本件で問題となっているデータ集は、「デッド オア アライブ2」に登場する女性キャラクターのコスチューム制御データを改変し、本来登場することのありえない「裸体」のキャラクターを登場させるもので、ゲームクリエーターの創作意図に反し、その評価を落としめる可能性が高いだけでなく、公序良俗にも反するものであると考えます。
したがいまして、本訴訟提起は、ゲームクリエーターの正当な権利の確立に向けた断固たる措置として、大変意義あるものだと評価します。
なお、ゲームソフト「ときめきメモリアル」(コナミ株式会社)用の改造データ入りのメモリーカードを販売する行為が、著作権法上の同一性保持権(20条1項)を侵害するか否かが争われた裁判において、最高裁判所(平成13年2月13日判決)は、次のような判断を下しています。
①本件ゲームソフトに「ストーリー」があることを前提に「そのストーリーは一定の条件下に一定の範囲内で展開される」とし、
②「本件ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され、ストーリーの改変をもたらすことになる」ような改造メモリーカードの使用は、ゲーム著作者の有する同一性保持権を侵害すると解しました。
③そして、その使用によって同一性保持権を侵害する改造メモリーカードを販売することは、「他人の使用によるゲームソフトの同一性保持権の侵害を惹起したもの」で違法であると判断しました。
この判決によれば、キャラクターの容姿、設定を改変するデータ集を利用して、本来登場することのないキャラクターを登場させてゲームプレイを行うことは、ゲームの幅を逸脱するものとして同一性保持権を侵害し、そのようなデータ集を販売することは同一性保持権の侵害を惹起するものとして違法と判断される可能性が高いと考えられます。
当協会では、今後も一層ゲームクリエーターの創作活動が促進されるよう、適切なゲームソフトの権利保護の確立を目指し、積極的に活動して参ります。
以上
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