映像の「ストリーミング配信」による著作権侵害、日本初の摘発
平成18年7月4日
(社)コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)
(中)日本動画協会(AJA)
福岡県警生活経済課と小郡署は平成18年7月4日、権利者に無断で複製した映画などの映像コンテンツを、自らが運営するホームページを通じて、インターネットユーザーに閲覧させていた、岐阜県各務原市の自営業男性(41歳)を、著作権法違反の疑いで逮捕しました。
ネットワークを通じ、受信と同時に再生する「ストリーミング配信」は、現在テレビ局なども同サービスを始めたことで話題となっていますが、映像ストリーミング配信による著作権侵害行為が摘発されたのは、今回が初めてです。
事件概要
男性は、平成16年11月25日ごろから平成17年8月3日ごろまでの間に、権利者に無断で、「機動戦士ガンダムⅠ」、「ドラえもんのび太のワンニャン時空伝」、「ブラックジャックカルテⅥ 雪の夜ばなし、恋姫」、「半落ち」、「ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島」の5作品を、男性の営業事務所に設置するサーバに複製し、自らが運営するホームページ「Streaming Station」を通じて募った会員に対して自動的に送信できる状態にし、(株)サンライズ、シンエイ動画(株)、(株)手塚プロダクション、東映(株)、東映アニメーション(株)らの著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害した疑いが持たれています。
「Streaming Station」にはこの他、洋画、邦画、アニメなど、合計759作品が公開されており、月額980円の会費で、サイト上にある映像コンテンツをすべて視聴することができました。
今年5月31日には、男性宅の家宅捜索が行われ、パソコン3台、DVDソフト、サイトの宣伝チラシなどが押収されています。
摘発までの経緯
警察の調べでは、男性は、平成17年6月ごろに、「Streaming Station」を立ち上げたことを供述しています。
ACCSでは、平成17年12月に、会員会社から「Streaming Station」について情報提供を受け、調査を始めていました。また、AJAでも、平成17年12月に、権利者団体より情報提供を受け、調査を行い侵害の事実を確認していました。
平成18年2月6日には、AJAから男性に対し、著作権侵害行為をやめるよう書面で警告を行い、同月13日には、男性から謝罪と、サイトを消去した旨のFAXが返信されていました。しかし、男性は、新入会員募集のページを削除したのみで、会員向けの無断送信は継続していました。そして、ACCSでも、2月17日に、男性に対し、サイトの問い合わせフォームを通じて警告を送信しました。
また、ACCSやAJA以外の権利者団体や権利者も男性の行為を認識しており、平成17年11月から12月にかけて、それぞれ電話や書面などで数回の警告を行っていたにも関わらず、男性は侵害行為を継続していたことが判明しています。
一方で、2月末頃、「Streaming Station」に会員登録をし、サイトを利用していた福岡県の男性から、違法サイトではないかとの相談が福岡県警に持ち込まれたことから、同県警では捜査を開始し、同県警からの連絡を受けたACCSでは、既に同様の対応を始めていたAJAと協力し、これまでの調査状況や男性への警告などについての情報提供をはじめとして、権利者による告訴意思の確認作業などを実施していました。
事件への見解
デジタル化、ネットワーク化が急速に進む現在、ACCSやAJAの会員会社である、映像コンテンツを扱う企業も、コンテンツのネット配信を始めています。ネット配信ビジネスの平成16年の市場規模は、173億円と推計されています。平成13年の推計が10億円であることから、その市場規模は3年間で約17倍の成長を遂げています((財)デジタルコンテンツ協会『デジタルコンテンツ白書2005』より)。
また、今年6月8日に知的財産戦略本部が発表した「知的財産推進計画2006」の中では、平成23年の地上デジタル放送への全面移行に触れ、本格的なデジタル時代の到来と共に、ネット上でのコンテンツのさらなる循環を予想しています。そして同本部では、そのためにコンテンツの保護や流通環境の整備をなすべきとしており、国を挙げた健全なコンテンツ流通を目指しているところです。
全面移行に触れ、本格的なデジタル時代の到来と共に、ネット上でのコンテンツのさらなる循環を予想しています。そして同本部では、そのためにコンテンツの保護や流通環境の整備をなすべきとしており、国を挙げた健全なコンテンツ流通を目指しているところです。
このような動きの中で、日本で初めての「ストリーミング配信」による著作権侵害の摘発となったこの事件は、大変意味のあるものであるとACCS、AJAは考えます。
ACCS、AJAは、今後もネット配信における著作権の適正な保護の実現を目指し、様々な活動を行っていきます。
「Streaming Station」について
- 映像は、すべてレンタル店から借りたDVDをコピーしたものであることを供述している。
- 男性の供述によると、会員は多い時で約70人、逮捕された時点では約40人であった。
- 男性は、映像コンテンツを閲覧させる際に、クレジット決済での会員登録を求めていたが、決済は海外企業を通して米国ドル換算で行われていた。
ACCSについて
社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は、コンピュータソフトウェアをはじめとするデジタル著作物の著作権者の権利を保護するとともに、著作権の普及活動を行い、コンピュータ社会における文化の発展に寄与することを目的として1985年に設立された文部科学省・文化庁許可の社団法人です。平成18年7月現在、296社の日本国内外のソフトウェアメーカーやコンテンツメーカーなどが会員となり、構成されています。
AJAについて
有限責任中間法人日本動画協会(AJA)は、平成14年4月にスタートした中間法人制度に併せて発足した、アニメーション制作会社を中心とするアニメーションの業界団体です。中小企業が多いアニメーション業界において、個々の会社で対応の難しい著作権侵害や制作環境の改善などの業界を取り巻くさまざまな問題に取り組んでいます。平成18年7月現在、50社のアニメーション関係企業が会員となっています。
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