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活動報告

「漫画村」運営者に対して、総額19億円の損害賠償を求め提訴

2022年7月28日更新

 会員からの報告によると、株式会社KADOKAWA(以下、KADOKAWA)、株式会社集英社(以下、集英社)および株式会社小学館(以下、小学館)の3社は、出版コンテンツの海賊版サイト「漫画村」の運営者に対し、「漫画村」により受けたと推計される損害の一部である総額19億2,960万2,532円(3社17作品・別表1を参照)の賠償を求め、2022年7月28日、東京地方裁判所に共同して提訴しました。

 「漫画村」を巡っては、出版業界をあげて対応すべき最重要案件であるとして、ACCS会員社が刑事事件の共同対応を進め、2019年7月から9月にかけて、運営者を含む4名が6都県警察合同捜査本部(福岡県警察、警視庁、栃木県警察、鳥取県警察、熊本県警察、大分県警察)により逮捕され、2019年11月から2021年6月、いずれも福岡地方裁判所で有罪判決が確定しています(別表2を参照)。

 刑事事件の捜査後、「漫画村」は閉鎖に至り、運営者を含む4名いずれに対しても著作権侵害行為等に対する刑事責任の所在が示され、社会的警鐘を鳴らしたという点で大きな意義を持ちました。

 しかしながら「漫画村」は、漫画コミックスや漫画雑誌はもちろん、一般雑誌や写真集、文芸作品などあらゆる出版コンテンツ約8,200タイトル(約73,000巻相当)を掲載し、最盛期には月間アクセスが1億に迫ると推計されるなど、違法な掲載によるタダ読みを通じて甚大な損害が発生しており、その被害回復はなされていません。

 そこで、KADOKAWA、集英社および小学館の3社では、刑事裁判の進捗を踏まえつつ、同時に損害賠償請求手続に向けた具体的検討を進め、本日、「漫画村」により受けたと推計される損害の一部である総額19億2,960万2,532円の損害賠償金の支払いを求めて共同して提訴するに至りました。

【「漫画村」を通じて生じた3社17作品に係る損害算定】
1 「漫画村」の2017年6月から2018年4月までのサイトアクセス総数は5億3,781万であったと推計される。
2 アクセスした利用者が1アクセスで漫画コミックス1巻を閲覧したと仮定すると、当該期間で5億3,781万巻分の閲覧があったと推計される。
3 「漫画村」には最大で7万2,577巻が掲載されていたことから、1巻あたりの平均閲覧数は7,410と推計される(5億3,781万巻分の閲覧÷7万2,577巻=7,410)。
4 「漫画村」へ掲載されていた請求対象作品の各巻ごとに、平均閲覧数である7,410と各巻ごとの販売価額を乗じて全て足し合わせ、作品ごとに損害を算定した。
5 ④で求めた作品毎の損害額を17作品全てで計算した上で足し合わせ、総額を算出した。

【3社による共同コメント】
 漫画村は2018年4月に閉鎖されるまで、アクセス数で国内最大の海賊版サイトであり、その犯罪収益モデルは、現在確認されている多くの同種サイトに大きな影響を与えたと考えられます。いわば海賊版サイトの象徴的存在であり、刑事罰に加え民事的にもその責任が追及されて然るべきです。
 事実、漫画村によって漫画家や原作者らが被った被害は甚大であり、作品をお預かりしている出版社にとって、漫画村運営者の民事的責任を明らかにすることは、現実的な回収可能性を措いても避けることのできない責務と考えます。大きな情熱と、骨身を削る努力によって産み出された作品に与えられるべき対価を、いかにも安易な方法で奪い取る行為は決して許されるものではありません。
 原告3社は、クリエイターが安心して新たな創作に挑める環境を守るため、海賊版という犯罪撲滅への重要な一石として、この度の提訴に至ったものです。

【ACCSコメント】
 ACCSはコンピュータソフトウェアのみならず、デジタル化された著作物の著作権侵害に対する会員の法的手続支援や広報啓発活動を幅広く行っています。漫画や雑誌などの出版コンテンツに関する著作権侵害対策も以前より行ってきましたが、特にインターネット上での無許諾アップロード対策について積極的に取り組んでいます。
こうした活動を通して、2017年7月ならびに9月には発売前の漫画作品に掲載されたイラストや台詞、あらすじなどを、いわゆるネタバレサイトで著作権者の許諾なく公開していた5名が逮捕されています。また、同年10月には、当時日本最大級とされた出版海賊サイト「はるか夢の址」を通じた無許諾アップロード事件でアップロード者およびサイト運営者ら9名が著作権法違反の疑いで逮捕されています。
 「漫画村」を通じた著作権侵害事件に関しては、外部メディアでの寄稿や職員による出張著作権講習会など、さまざまな機会において事件を取り上げ、社会に対して警鐘を鳴らし続けました。「漫画村」の事件が広く社会に取り上げられた結果、インターネットへの漫画の無許諾アップロードの被害は一旦減少したとの報道も見られましたが、現在でも依然として国外サービスを悪用した大規模海賊版サイトによるコンテンツ被害が継続しているのも事実です。
 ACCSはこのような現状を踏まえ、今後も会員への支援を行っていくとともに、関係団体とも緊密に連携し、著作権が尊重される社会の実現に向けてさまざま侵害対策・啓発活動を進めてまいります。

別表1 本民事損害賠償請求における17作品
出版社 作品請求金額
KADOKAWA オーバーロード
ケロロ軍曹
賢者の孫
盾の勇者の成り上がり
トリニティセブン 7人の魔書使い
ヒナまつり
僕だけがいない街
無職転生 ~異世界行ったら本気だす~
4億5,083万9,961円
集英社 キングダム
ONE PIECE
4億7,692万3,161円
小学館 黄金のラフ~草太のスタンス~
カノジョは嘘を愛しすぎてる
からくりサーカス
ケンガンアシュラ
黄昏流星群
ドロヘドロ
YАWARА!
10億183万9,410円
3社合計17作品 19億2,960万2,532円
別表2 「漫画村」の刑事摘発における逮捕日、判決内容など
逮捕日公訴事実概要判決言渡日判決内容
運営者2019年9月24日※1「漫画村」を通じて漫画作品を権利者に無断で公開していた事実(著作権法違反事実)、「漫画村」運営を通じて得た犯罪収益を隠匿・仮装していた事実(組織犯罪処罰法違反事実)2021年6月2日懲役3年、罰金1,000万円、追徴金6,257万1,336円 ※2
共犯者2019年8月10日「漫画村」を通じて漫画作品を権利者に無断で公開していた事実(著作権法違反事実) 2020年3月18日 懲役1年10ヶ月(執行猶予3年)、罰金100万円 ※3
共犯者2019年7月10日「漫画村」を通じて漫画作品を権利者に無断で公開していた事実(著作権法違反事実) 2019年11月7日懲役1年6ヶ月(執行猶予3年)、罰金50万円
共犯者2019年7月10日「漫画村」を通じて漫画作品を権利者に無断で公開していた事実(著作権法違反事実)2019年12月5日懲役1年2ヶ月(執行猶予3年)、罰金30万円

※1 2018年5月出国、フィリピン共和国内において所在が発覚し、2019年7月7月、現地当局が拘束、強制送還後日本国内で逮捕
※2 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/489/090489_hanrei.pdf
※3 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/448/089448_hanrei.pdf

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