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活動報告

日本行政書士会連合会、山口大学、コンピュータソフトウェア著作権協会 著作権の普及啓発に係る包括連携協力に関する協定を締結

2019年5月10日

日本行政書士会連合会
国立大学法人山口大学
一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)

 日本行政書士会連合会(日行連)、国立大学法人山口大学(山口大学)、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の三者は、これまで独自に著作権の普及啓発活動を行ってきました。現在我が国においてはイノベーションを創出する人材育成のため、知財創造教育を推進するための取組が進められており、今後、三者の持つ強みを活かして協働することにより、より効果的な普及啓発活動を進めることとし、2019年5月7日、著作権の普及啓発に係る包括連携協力に関する協定を締結し、同日、虎ノ門タワーズオフィス6FROOM6において、調印式を開催いたしました。
 同協定は、デジタル・ネットワーク時代に求められるデジタルコンテンツの適切な権利保護と利用を推進し、もって文化・社会の発展に寄与することを目的とし、特にICT活用教育の進展に伴い著作権の知見が必須とされる知財創造教育分野への取り組みにおいて著作権に関する普及啓発に努め、相互に協力することとしています。
 調印式では、本協定に関し、各団体の代表による挨拶が行われました。

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なお、コメントの全文は以下の通りです。

日本行政書士会連合会 遠田和夫会長あいさつ

 行政書士は、かねてより行政書士法第1条の2に基づいて、著作権および著作隣接権ならびにプログラム著作物に係る各般の業務を行ってまいりました。
 この経験を活かし、日本行政書士会連合会は、2002年に、文化庁様の協力の下、著作権相談員養成制度を創設し、現在に至っております。著作権相談員養成制度を創設した時期の我が国の社会は、1999年に産業活力再生特別措置法が、2000年に産業技術力強化法が、2002年には知的財産基本法が、次々に制定されておりました。まさに、著作権を含む知的財産権の重要性が世の中に知られていく契機となりました。
 しかしながら、行政書士が著作権に係る業務に携わっていくなかで、著作権に関わる考え方が国民の間に浸透していないことを痛感せざるを得ない事柄が多々ありました。
 くしくも、我が国では、データのねつ造や論文盗用といった研究活動における、著作権侵害を含む不正行為発覚の事案が増え、これを受け、2013年に、内閣総理大臣の特別な機関である日本学術会議が「科学者の行動規範―改訂版―」の声明を発表しました。追って、2015年に、独立行政法人日本学術振興会が「科学の健全な発展のために―誠実な科学者の心得―」を発表し、そのなかで、著作権の侵害事案に関してもページを割いて言及することとなりました。
 このような潮流の中、日本行政書士会連合会は、2016年から現在まで文化庁委託事業である「著作権者不明等の場合の裁定制度の利用円滑化に向けた実証事業」に協力するとともに、2017年には内閣の知的財産戦略本部に設置された知財創造教育推進コンソーシアムの正式な委員として参画させていただいているところであり、著作権の分野の普及啓発の一翼を担うべく、研鑽を重ねているところです。
 都道府県行政書士会では、これまでも地域の小学校、中学校などに、街の法律家、すなわち支援人材として出前授業を行ってまいりましたが、先般の学習指導要領の大改正により、著作権の考え方について、通常の教科の中で扱うことができるようになりました。加えて、「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)を進める指導方法が推奨されており、支援人材であるわたくしどもはもとより、学校現場においても新学習指導要領への対応をこれまで以上に工夫していくこととなりました。
 そのため、日本行政書士会連合会は、著作権の知見が必須とされる知財創造教育分野への取組において著作権に関する普及啓発を積極的に進め、もって我が国の文化および社会の発展に寄与したいと願い、文部科学大臣から知的財産教育分野の共同利用拠点に認定されている山口大学様、デジタル著作物の権利保護や著作権に関する普及啓発に取り組んでおられるコンピュータソフトウェア著作権協会様とともに、本日の協定締結に至りました。
 本日が、三者による著作権の新たな普及啓発の始まりの日となりますことに感謝申し上げるとともに、今後の三者の取組にご関心をお寄せくださり、また、ご支援をいただきたく、お願い申し上げます。
 最後に、日本行政書士会連合会は、今後いっそう、行政書士業務の改善進歩を図るとともに、政府の諸施策実現に向けた様々な協力や専門人材の養成などを積極的に進め、我が国の発展に寄与してまいる所存であることを申し上げ、コメントといたします。本日はありがとうございました。

山口大学 岡正朗学長あいさつ

 山口大学は、大学の経営方針として、事業戦略人材の基本スキルである知的財産教育を重視してきました。これは、文系理系の枠を越えてSociety 5.0の時代を生き抜く「価値創造の仕組みをデザインする力」を育てる取組でもあります。来たるべき超スマート社会では、文理を問わずAIやビッグデータを使いこなして、技術革新と社会課題を組み合わせた新たなモデルを創造する人材が求められており、その基盤となる知財全般の知識とスキルの教育が不可欠です。
 本学は、2005年の技術経営専門職大学院の開設にはじまり、2013年度から学部初年次教育で全学生対象の知財必修科目を開設し、次年度以降、教養教育科目として特許法、著作権法、標準化とビジネス、知財情報の分析と活用等の科目を整備しました。現在では、教養科目として大学院までの知財カリキュラム体系を確立しており、併せて特許検索インストラクター講座として修了試験合格者に学長名で認定証を付与する制度を広く学外にも開放しています。
 また、教育学部専門科目の「教育現場における知的財産入門」、国際総合科学部のデザイン科学と合体した知財教育科目群など、全学的な科目開発も知的財産センター主導で進めています。国際総合科学部の取組は、実践的な知財科目開発のパイロット事業であり、TOEIC730点の卒業要件と原則1年間の海外大学留学と組み合わせて、国際的に活躍する知財や標準化人材育成のモデルと考えています。そこでは、契約交渉から契約書作成の演習、コーヒーのドリップパック製作から特許請求の範囲を考えさせる演習、著作権の知識を元にコンテンツ産業のビジネスモデルを提案する授業など、学部として新時代に対応する知財教育の実験を進めています。
 これらの実績を元に、山口大学知的財産センターが2015年7月に知的財産教育研究共同利用拠点として文部科学大臣の認定を受けました(2023年3月31日まで)。この拠点は、これまでの授業開発の成果物およびノウハウを使って、他の教育機関に対して知財教育に関する教員研修(FD)、知財全般の職員研修(SD)による支援活動を行うものです。2015年7月の認定時から2018年末までに、主として他大学の教職員約30,000名の支援実績があり、いくつかの大学では知財授業の全学必修化に向けた準備が進んでいます。更に、内閣府知的財産戦略本部が推進する知財創造教育コンソーシアム検討委員会のメンバーとして、小中高等学校の知財創造教育のシステムや教材開発にも参画しています。 このように、小学校から大学、そして社会人の知財教育まで、実務部門の実践例を迅速に教材化することに特色を持っており、そのために知財教育部門に、「特許行政・審査・活用」「コンテンツ系知財教材」「ものづくり系知財教材」「e-learning著作権処理」「美術系著作権処理」「ライフ・農学系知財教材」という異なる専門領域の教員を配置しています。
 この度、地域の学校で法教育の実績を持つ「日本行政書士会連合会様」と、ソフトウェア著作物の権利保護に取り組んでおられる「コンピュータソフトウェア著作権協会様」との三者協定により、各組織の強みを生かして著作権に関する普及啓発が促進されることと期待しています。
山口大学は、今後も新時代に対応する教育改革を進めるとともに、知財教育の普及を通した社会貢献に努めてまいる所存です。
 本日は、ありがとうございました。

一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会 久保田裕専務理事あいさつ

 私たち一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は、この度の協定で、三者の連携によって著作権教育や普及活動が強力に展開できることになったことに大きな意義を感じています。 

 ACCSは1985年にパソコン用ソフトウェア開発会社を中心に設立され、以来、30年以上にわたり、ソフトウェアやデジタルコンテンツの著作権侵害に対する刑事事件の支援や、企業・団体など組織内における不正コピー対策活動などに取り組んでまいりました。
 コンピュータソフトウェアはデジタル形式の著作物のため、簡単にコピーが作られてしまい、また、通信技術の発達により、侵害が世界中に広がってしまうことから、その対策に最前線で苦心してきました。
 現在では、インターネットとIT機器の普及により、文章、写真、音楽、映像など全ての著作物がデジタル化されたことから、誰もが他人の著作物を無断利用して著作権を侵害してしまうリスクがあり、コンピュータソフトウェアと同様の脅威にさらされています。この点、私たちのノウハウを広く活かすことができます。
 また、あらゆる著作物がデジタル化された現代においては、意図せず著作権を侵害してしまうリスクを避けることが必要ですし、並行して、著作物を適切に利用し、新たな著作物を創造していくための著作権教育、情報モラル教育が非常に重要と考え、今までも積極的に教育活動を行ってきました。私たちが学校や企業に対して行った授業や講演は、2005年から2018年までで633回、延べ54,417人に及びます。また企業の法務担当向けの知財セミナーの開催、大学や高専機構と連携した教育プログラム作りや講義の実施、著作権に関わる書籍や小冊子の発行・発刊、ビジネス著作権検定の後援など、さまざまな著作権学習の場やツールを提供してまいりました。
 今回、日本行政書士会連合会と山口大学とACCS、三者の協定によって、より広い範囲で法教育が行われることについて、期待しています。ACCSがこれまでの活動で培ったノウハウや、法に関する知識を余すことなくこの協定を通じて広く伝え、日本の情報社会の秩序の醸成や、創作と利用のため著作権を活かすための教育に貢献していきたいと考えています。

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